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四、

書籍は商品でしょうか。
私はひそかに、一切経の刊行は、鉄眼禅師のように慈悲心で刊行せられるもので、営利の目的物としては、あまりに尊過ぎるものではあるまいかなどと考えていました。
医が仁術でなくなって、いたくその気品を落としたように、出版物が営利と目的とするものになって、書物の信用が著しく低下したのではないかと思います。...
精神的影響に重点をおく出版業に、営利の傾向を見るのは、悲しい事と存じます。

私は先きに次男をして芦田書店を経営させて敗れました。
今は長男、三男をして、同志同行社の経営をさせていますが、私の出版理想が祟りをなすのか、どうもはかばかしく参りません。
よく、世の中は目明き千人、盲千人という。
その盲を射る出版物も時には必要であると教えてくれる人もありますが、不幸私には、その融通性が欠けていると見えて、どうしてもそうした気になれません。
痩せても枯れても、わが所信に立ってと考えて、今日までは押して来ました。
同志同行社発行の書は、著者が赤誠をこめたものでないものはない積もりです。

今回、森先生の「修身教授録」を発行することになりました。
そのことに至る経過と計画、及び「同志同行」の諸兄姉に対する希望は、前に尽くしました。
同志同行社のような微力なものが、先生のこの大著をいただくということは、全く意外望外の事です。
もしkの事実に説明を加えるのだったら、森先生、斯道会員及びこれに関係ある方々が、私の微志に御同情下さったという外には、何もありますまい。
誠の感応とでもいう外ありますまい。

森先生は、ただ今東京で、原稿の加筆に、これ日も足らぬお忙しさです。
私も旅をしながら、この出版に遺漏なきようにと、色々苦心しています。
この上は財力ですが、これも一巻を発行する準備だけは、どうにか出来ました。
このことは発行部数と、この書が現代及び未来にいかに影響するかの問題です。
それは我が同志同行の諸兄姉及び読者諸君に属することです。
私はしみじみ思います。
もし世に理想的出版物があるとしたら、「修身教授録」はまさにその一つであろうと。

日本の小学教育が、人物育成の一点にめざめ、これが改良に着手する日がありましたら、何よりも自己育成の指針たるべきこの「修身教授録」が、まず読まなければならないものと思います。
とにかく、森先生御自分の足跡をたどって説かれたこの「修身教授録」は、世にも得がたいものと存じます。

(雑誌「同志同行」第八巻第八号より)

森信三全集 第八巻』 
附編 「修身教授録」の刊行にあたり  芦田恵之助

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三、

最初は八冊を月々刊行して、八ヶ月で完成の予定でありましたが、先生のお考えで、八冊を男子の部三冊、女子の部二冊、あわせて五冊に縮約し、隔月刊行、十ヶ月にして完了することになりました。
「第一回の配本を昭和十五年の一月よりとし、三月、五月、七月、九月をもって完結させたいと思います。
昭和十五年といえば、我が国紀元二千六百年の記念すべき年、教育勅語渙発布の五十周年です。...
この記念すべき年に、同志同行社が、先生の「修身教授録」を刊行して、国の根本的改革に貢献する事の出来るますのは、いささか宿志に向かって、一歩前進するかの様に思われてなりません。

世が世なら、紙もなるべくよい物を、クロースも選りに選ってと考えるのですが、何といっても物の不足なこの非常時、紙は再生品になりはせずやと懸念しています。
唯今のところ、主として考えている事は、製本の堅牢、保存の確実ということのみです。
永久の書には、何においても、この一点は注意しなければならない事に存じます。

紙の大きさは四六版で、三百頁から四百頁の間かと思います。
定価も壱円五拾銭から弐円までの間でしょう。
私は道の流布を願って、利の多少を考えるのではありませんから、なるべく同志同行諸兄姉の御便利なようにと工夫致します。

従って「修身教授録」のご購読は、全国各地の書店にお命じ下さってもよろしうございますが、出版部数の概算を知るために、第一冊に限り講読の希望のお葉書をいただきとう存じます。
同志同行社は、これによって発行部数を定め、なるべく御期待に添うようにつとめます。
もし恵雨会でおまとめを願い、お申込み下さいましたら、結構だと存じます。
斯道会のご関係の方は、そちらに御申込み下さってもよろしうございます。

特にお願い申したいのは、同志同行諸兄姉以外の方で、御講読を給わるお心当たりがありましたら、この際お申込み下さいますよう御勧誘をお願い申し上げます。
尚学校の備品として御購入下さいます分も、申込みの葉書だけは、お忘れなきようにお願い申します。

森信三全集 第八巻』 
附編 「修身教授録」の刊行にあたり  芦田恵之助

※画像は昭和17年10月に初版発行された『修身教授録五』の奥付。
定価が弐園となっている。
当時の食パン一斤が20銭だったので、現在の価値に換算すると2,000円ほどとなる。

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