Photos
Posts

「感じて・・・、漢字の世界」。
今日の漢字は「器(うつわ)」、
「容器」「器量」の「器(キ)」。

「器(うつわ)」という漢字の古い字体をよく見ると、...
四つの「口」という字に囲まれているのは
「大」ではなく、「犬」という字です。
これは、戦後、漢字への十分な知識がないままに
文字の形を改革したため、
「犬」の文字から点が
抜け落ちてしまったからだといわれています。

白川文字学によれば、
この四つの「口」は、神への祈りの言葉を入れる箱。
「犬」は、祭祀や儀礼の際、
神に捧げられたいけにえでした。
古代中国において、「犬」は祓いや清めの力をもつ
特別な存在だったといいます。
そこから、祈りの言葉を入れた箱を並べ、
その真ん中に横たわる犬を描いた「器」という漢字は、
清められた神聖な「うつわ」を意味するようになったのです。

「君子は器(うつわもの)ならず」とは、論語の一節。
「器は用途が限られているが、人の上に立つ者は、
決まった使い方しかできない人物であってはならない」という教えです。

でも、その実そこらのお偉方より、
器はまさに「器が大きい」。
選び方や盛り付けで料理人の腕を底上げし、
名も知れぬ花を、受け止めてくれる器たち。
エッセイストの平松洋子氏は、
晩秋の小さな実や枝を楚々とした
そば猪口に挿して想うのです。
「花や枝を受け止めて未知の輝きを放つ、
 それはうつわというモノの生命力である」と。

それでは、また来週。
山根基世でした。

* 参考文献 
『常用字解(第二版)』(白川静/平凡社)
『買えない味』(平松洋子/ちくま文庫)

See More
感じて、漢字の世界 added a post from October 26 to their timeline.
October 26

「感じて・・・、漢字の世界」。
今日の漢字は「嫌う」「嫌(いや)」、
「嫌悪する」の「嫌(ケン)」。

女へんに「兼ねる」「兼用」の「兼」と書いて「嫌う」。...
この「兼ねる」という字は、
二本の稲穂を手であわせ持つ様子を表しています。
二本の縦棒が、実のたわわについた稲穂で、
カタカナの「ヨ」の字に似た部分が人の手。
つまりこの「兼ねる」という字は、
一本の稲では満足できず、
二本の稲を手に持つ様子を示しているといいます。
そこに女へんを添えた「嫌う」という字は、
もともと女性が決断できずに思い悩むことを
表していたようですが、
のちに、誰もが不満に思う気持ちきらう、にくむ、という意味になりました。

「嫌だ」という意思表示は、ときにわがままだと非難されます。
正直な気持ちと、他者を気遣う気持ち。
稲を二本とも手放そうとせず、ふたつを両立させるのは難しいもの。
近年、日本で注目を集めている心理学者、アルフレッド・アドラー。
彼は、人間の自由とは「嫌われる可能性を怖れず前に進んでいくこと」だと説きます。
さらにアドラーは、警鐘を鳴らすのです。
他者の期待を満たすために生きるのは、
自分自身の人生を生きることにはならない、と。
「嫌われる勇気」を出して「好き」を選び取り、
自分の人生を自分の足で、潔く歩いていけたら本望です。

それでは、また来週。
山根基世でした。

* 参考文献 
『常用字解(第二版)』(白川静/平凡社)
『字源の謎を解く』(北嶋廣敏/イースト新書)
『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』
(岸見一郎・古賀史健/ダイヤモンド社)

See More