5分でわかる近代神道
近代以降の神道が、それ以前の神道とどこが違うのか。江戸時代までは「神仏習合」だったくらいの認識はあっても、「神仏習合」というのがどういう状態だったのがをちゃんと理解している人は少ないです。また、「神仏習合」を否定した「神仏分離」政策によって「廃仏毀釈」が行われ、各地で様々な破壊行為が行われたことは知っていても、その後神道が国家によってどのように作り替えられたのかを具体的に知っている人も少ないでしょう。そこで、明治政府の宗教政策によって、全国の神社がどのように作り替えられたのか、箇条書きにしてごく簡単にまとめてみました。
(1)神社改め
言ってみれば神社の戸籍調査です。各神社の由来を提出させて、〇〇菩薩や△△権現等仏教色の強い祭神名は変更させ、名前や由来のはっきりしない祭神は「記紀神話」に登場する「由緒正しい」神名に統一しました。神社の名前も変えさせました。「八坂神社」のように「地名+神社」になっている神社の多くはこの時につけられた名前です。
(2)社格の制定
全国の神社に官幣社・国弊社・諸社(県社・郷社・村社など)のランクをつけて、伊勢神宮を頂点とするピラミッド状に組織しました。元来神社というものはそれぞれが独立した個人商店のようなもので、八百吉と魚勝のどちらが上かなんて決められないように、お稲荷さんと八幡様の間には上下関係どころか、そもそも関係がありませんでした。それを国家が統制しやすいように一つの組織に組み入れたのです。要するに八百屋さんや魚屋さんをすべて「大日本商店会」に強制加入させたようなものです。一方、寺院は近世以降本山と末寺の制度が確立して、いわばフランチャイズチェーンのような関係になっています。浄土宗のお寺に行けば日本全国どこでも「南無阿弥陀仏」と称えるわけです。
(3)神職の官制化
神社の神職はほとんどの場合世襲だったわけですが、それは「国家の宗教を私物化するものだ」ということで世襲は禁止、多くの神職がクビになりました。新たに官員の神職を任命したのですが、その多くはたとえば長州藩のお侍だった人たちとかでした。新政府の失業対策でもあったのです。中には形だけ一度クビにしたことにして再雇用されて存続した世襲神職もいます。世襲の禁止によって何百年もの間社家によって受け継がれてきた祭礼の伝統などが断ち切られました。
(4)祭式の統一
神職の世襲禁止によって代々受け継がれてきた祭式が途切れ、にわか素人神主が大量に発生したため、だれでも神事が行えるように行事作法のやり方の統一マニュアルが作成されました。これによって「研修を受ければあなたも神主」ということになりました。いわば神社のマク〇ナルド化です。祝詞の上げ方や玉串の捧げ方など細かい点まで徹底したマニュアル化が図られました。今はどこの神社に行っても「二礼二拍手一礼」と書いてありますが、拍手の回数ひとつをとっても、以前は神社によってまちまちでした。
(5)神社の規格統一
「上地令」によって境内以外の社有地を没収し、社格によって社殿や境内の規模や配置を定めた「制限図」を公布、神社の建物の規格の統一化を図りました。たとえば県社ならば本殿の大きさは何間と具体的に決められています。昔、公立の小中学校は日本中どこに行ってもコンクリート打ちっ放しの同じ形をした建物でしたが、それと似たようなものです。なので明治以降に建て直された神社は、鳥居から手水舍、拝殿、本殿、賽銭箱の位置までだいたい同じです。江戸時代以前に建てられた古い神社の中にはユニークな建物や配置のものがまだ残っています。
(6)氏子制度の制定
「一村一社制」を敷いて神社のない地域をなくしました。たとえば淨土真宗の強い地域などでは神社のない村もあったのですが、かならず村の鎮守を置くようにしました。その上で、子供が生まれたら神社に届け出てお札をもらい、常にそのお札を身につけ、よその土地へ引っ越したらその村の神社に届け出て新しいお札をもらい、死んだらお札を神社に返納することにしました。つまり、江戸時代の「寺請制度」を神社に置き換えて、神社に戸籍管理等行政事務の一端を担わせようとしたのです。これは、村役場が機能するようになって不用となりました。
以上、要するに近代に入って神社はそのハードもソフトも大きく変えられ、国家が利用しやすいように作り替えられたのですね。それを「神道は二千年の長きにわたって続いてきた宗教」と言うので、昔から今のような形で存在し続けてきたかのような錯覚に陷ってしまう。今年サミットが行われる伊勢神宮だって、近世の参詣案内を見れば今とはまったく異なる様相であったことがわかります。それを知らないと「ここには悠久の時が流れている」とか「これこそ日本人の心の原郷である」とか言われて、簡単に催眠術にかかって感激してしまうのですね。近世の伊勢神宮はメチャメチャおもしろいです。あれを知らないでお伊勢参りをしてはもったいないと思います。